大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)19号 判決

事実及び理由

(争いのない事実)

一  本件に関する特許庁における手続の経緯、本願考案の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決の認定判断は正当であつて、原告がその取消事由として主張するところは、以下説示するとおり、理由がないものというべきである。

前示の本願考案の要旨に成立に争いのない甲第二号証(本件公報)を総合すると、本願考案は、「樹高、地上高および幅間、宙間等のいわゆる間隔測定をするための計数表示式間隔測定杆に関するもの」(本件公報第一頁第一欄第一三行ないし第一五行)であり、「従来この種、間隔測定杆は杆柱を順次に繰り出し、この杆柱の外面に記載した目盛によつてあらかじめ全体の長さを測定し、しかる後にこの全体の長さより基杆の長さを差し引いて所定の間隔数を求める等、非常に煩雑な手数が必要であつた。」(本件公報第一頁第一欄第一六行ないし第二〇行)ことや間隔測定杆の測定具として金属性テープの巻尺が使用されたものにおいても、「測定作業中にテープが折損する事態が発生し、測定ができなくなることがあり、また異常な雑音を発したり、通電する等の懸念があり、安全上においても重大なる欠点があつた。」(本件公報第一頁第一欄第二四行ないし第二七行)ことから、これらの問題点にかんがみ測定に便利で、安全な測定杆を提供することを目的として、本願考案の要旨(明細書の実用新案登録請求の範囲の記載に同じ。)のとおりの構成を採用したもので、この構成によると、目盛を記載するフイルムテープをプラスチツク製としているので、非常に軽量となり、しかも、絶縁効果が充分となり、最内部の杆柱の先端を電線に引つかけて電線の高さを計測する等の場合にも目盛記載のフイルムテープを電気が伝導するおそれがなく、また、テープケースに目盛表示窓を設けて、ここで目盛を読み取るようにしているので、目盛の読取りが容易であり、しかも、基杆の下端部にローラを支承し、このローラを介してテープを最内部の杆柱に連結するものであるので、テープが杆柱の中を通過中に内部の杆柱と接触することが少なく、テープ切れ、目盛消えなどのおそれがほとんどなくなり、更に、ローラを介してテープケース内に廻巻するので、テープケースの取付位置を基杆の下端部でなく、測定者が目盛を読み取るのに好都合な上端部又は中間部にすることができるなどの効果を奏する計数表示式間隔測定杆を実現したものであることが認められる。一方、第一引用例に、本件審決認定のとおりの記載、すなわち、「基杆内に順次径の細くなる数本の杆柱を伸縮自在に嵌挿し、前記基杆の外側面に、テープケースを取り付け、該テープケース内に、表面に目盛を表示したテープをばねを介して廻巻収容し、前記テープケースに目盛表示窓を設けて該目盛表示窓から前記テープの目盛を読み取るように、テープの一端を、前記基杆の下端部に支承したローラを介して前記杆柱に連結した計数表示式間隔測定杆」が記載されていることは、原告の認めるところ、以上の事実に基づき、本願考案と第一引用例記載のものとを対比すると、本件審決が認定判断したように、本願考案においては、目盛を表示したテープがプラスチツク製であるのに対し、第一引用例記載のものにおいては材質がそのように特定されていないことが異なるのみであり、その他の構成においては両者は共通するものであることが認められ、したがつて、テープをプラスチツク製としたことによる効果の違いを除いて両者の奏する効果に違いがあるものとは認められない。そして、成立に争いのない甲第四号証(第二引用例)によれば、第二引用例には、制動装置付自動巻込式巻尺のテープとして、「布帛、鋼、合成樹脂等から作製された帯状体に目盛が施されたもの」が記載されていることが認められる。そうすると、第一引用例に記載された計数表示式間隔測定杆のうちの目盛を表示したテープを第二引用例に記載されたようなプラスチツク製とすることは、当業者が適宜なし得るものと認めるのが相当である。この点につき、原告は、本願考案が、通電された電線の高さを測定する場合にも、感電のおそれのない計数表示式間隔測定杆を得ることを技術的課題とし、これを実現した考案であるのに、第一引用例及び第二引用例には、本願考案が技術的課題とした点について、何ら開示ないし示唆するところがないから、第一引用例記載のものに第二引用例に記載された事項を結び付ける根拠は薄弱である旨及び本願考案の効果の顕著性を主張するが、プラスチツクは、材質として金属より軽量で柔軟性があり、かつ、絶縁性のあるものであることは当業者にとつて自明のことであつて、第一引用例に記載されたような計数表示式間隔測定杆において、その目盛を表示したテープをプラスチツク製とすることによつて、金属テープより軽量とし、また、柔軟性と絶縁性のあるものとする技術的課題は、極めて容易に認識し得る事項というべきであるから、右の技術的常識からして、第一引用例記載の計数表示式間隔測定杆のテープを第二引用例に記載されたプラスチツク製のものとすることには格別の困難性があるものとはいえず、また、原告主張の本願考案の顕著な効果も、目盛を表示したテープをプラスチツク製フイルムテープとしたことによる当然の効果であつて、格別のものと認めることができない。したがつて、本件審決が、本願考案は当業者が第一引用例及び第二引用例に記載された考案に基づいて極めて容易に考案をすることができたものと判断したことは、正当であり、何ら違法の点はない。

(結語)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に認定判断を誤つた違法があることを理由に、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却することとする。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

基杆内に順次径の細くなる数本の杆柱を伸縮自在に嵌挿し、前記基杆の外側面に、テープケースを取着け、該テープケース内に、表面に目盛を表示したプラスチツク製フイルムテープをばねを介して廻巻収容し、前記テープケースに目盛表示窓を設けて該目盛表示窓から前記フイルムテープの目盛を読み取るようにし、フイルムテープの一端を、前記基杆の下端部に支承せるローラを介して前記杆柱のうち最内部の杆柱に連結してなる計数表示式間隔測定杆。

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